仮面ライダーガッチャード妄想二次創作物語 19.5話「アトロポスの憂鬱」

今回はアトロポスのストーリーを妄想してみました!

19話と20話の間の物語。
途方に暮れるアトロポスの胸中は・・

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注意-当作は公開情報から考えた完全な素人妄想二次創作物語であり
厳密でも正確でも資料性もありません
もし万が一似た箇所があったとしても偶然です

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19.5話
「アトロポスの憂鬱」

今日もアトロポスは
ケミーカードの探索を行ない
エンジェリードを発見する

普通の人間の錬金術師ならば
とても厄介な相手だが
アトロポスは難なく捕獲

容易い、とは言え、
やはりケミーライザーの効果は絶大だ

アトロポスはあらためて
ケミーライザーの性能に感嘆していた

そして今、
アカデミーの制服を着ている事、
無意識の内にケミーライザーへの信頼感と
ミナトへのイメージを
重ね合わせている事に気がつき
軽い衝撃を受けて我に帰った

アトロポスは数日前の事を
思い出していた

茜色の夕焼け空

アトロポスは
街を見下ろす小高い丘の上で
沈みゆく夕陽を眺めながら
黄昏れていた

この日りんねを始末する筈だったのに
まさか自分が助けられてしまった

そればかりか、りんねに
仮面ライダーとしての力を取り戻させてしまった

アトロポスはただただ逃げるしかなく、
醜態を晒す結果になってしまった

アトロポスは
とてもこのままでは
帰れなかった

夕陽がアトロポスを照らす

いつもと全く変わらない
能面のような無表情

でもその心情は激しく揺らいでいた

(りんねは何故僕を助けたのだろうか?)

(惨めだ・・)

(何もかも順調だったのに・・)

(まさか僕があんな失敗をするなんて・・)

アトロポスはヨアケルベロスに黄金にされ、
マジェードに回復された忌々しい自分の右腕を
ギュッと掴んで苛立ちをぶつけずにはいられなかった

(あんな失敗さえ無ければ
りんねは始末出来たし、
変身する事もなかった)

(ヨアケルベロスも逆らわず、
失う事も無かった・・)

(グリオン様に何と言えば良いか・・)

(こんな事じゃ妹達に示しがつかない・・)

(僕はどうすれば・・)

その時ふいに直ぐそばにミナトが現れた

アトロポスはイラついた

(僕に気づかれずに近づくなんて
やはり油断ならないね)

もちろんミナトは
アトロポスの心情を察している

「お疲れ様」

アトロポスは何も言わず睨んでいる

「おいおい、そんな顔で睨むなよ、
心配して様子を見にきたんだぜ」

「意味不明だね、そんな事言って僕を侮辱するか
説教でもしに来たんじゃないのかい?」
「特に君は先生なんだから説教は得意だろ」

(もちろんそんな事したらただじゃ済まさないけどね)

「それに僕はまだ君を仲間と認めた訳じゃない、
グリオン様の指示だから仕方なくだよ」

ミナトはそれはこちらも同じなんだがなぁ
と思いながら言った

「説教なんてまさか!」

「俺からアドバイスする事なんて何も無いよ」

「あれはたまたま起きたアクシデントに過ぎない」

「それに君達の凄さはこれまで闘ってきた俺が一番良く知ってるよ」 

「・・よく言うね」

「いやいや、こんな言葉がある
“ライバルの評価は最も信頼出来る”」
「だよ、だから信じて欲しいな」

このやり取りの中、
アトロポスは少しリラックスしてきた
そしていつもの冷たい眼をむけながら

「説教じゃ無いけど、なんだか説教みたいに感じるね」

「・・でも嫌いじゃ無いよ」

ミナトは少し驚いた

さらに
「さっきのライバルの話って誰かの格言なのかい?」

「あぁ、あれは・・俺の言葉だよ」
ミナトは何気なく夕日を見つめ、
落ち着いてそう言った

夕陽に照らされた横顔は、そこにじっとしているのに、
まるで次第に遠ざかり、今にも消えてしまいそうに儚く見えた

「誰だって上手くいかない事はあるさ、
君程の力があってもね」

「でも大事なのは、今自分がやらなければならない事を
見失わない事じゃ無いかな・・」

「こんな事を言うと、やはり説教みたいかな?」

アトロポスは黙って聞いていた

「まあ・・それに俺だって、
仲間と思うかどうかについては同じだよ」

「そうは見えないかもしれないけど、
まだ気持ちが追いついてないんだ。」

「だから君と一緒だな」
ミナトは微かな笑顔を見せた

「とにかく心配しないで大丈夫だよ」
「グリオンは怒ったりしないさ」

アトロポスは一瞬、
フッと気持ちが楽になる気がしたが、
すぐにハッとして凄んだ
「お前にグリオン様の何がわかる!?」

「わかるさ」
「グリオンは何も言わないし
そうは見えないかもしれないけど、
君達をとても頼りにしているし
これからも必要としていると思うよ」

「だから安心して戻っておいで」

アトロポスは
いつの間にかミナトのペースに乗っている事、
そしてミナトは自分を子供扱いしている、と感じて感情が昂った

「僕は子供じゃない、一人でちゃんと帰れる」

「ここに居たのはたまたま休んでいただけさ」

「僕はここから見える夕陽が好きなんだ!」

・・アトロポスは自分の口から心にも無い言葉が
飛び出した事に驚いたが、相変わらず表情には一切出さない

「そうか、なら良かった」
「これで今日の俺の役目は終わりだな。
安心して帰れるよ」
「じゃなあ」

アトロポスは暫くの間、
何も言わず、立ち去るミナトを睨んでいた

やがて空から茜色が無くなり
夜の表情を見せ始めた頃、
アトロポスはアカデミーに戻った

ドアが開く迄は平常心を保っていた

でもドアが開ききる迄の待ち時間

そのほんの僅かのタイミングを
キッカケにして急速に不安が広がってしまった

でもドアは待ってくれず
開ききってしまう

意を決してアトロポスは入室した

・・果たしてミナトの言う通り
グリオンは優しかった・・

やがてアトロポスは冷静になるが
状況が落ち着くにつれて
抑えていた感情が急速に湧き出す事を感じていた

相変わらず表情にそれと分かるものは
一切何も出さなかったけれど

でもその時からアトロポスの心の中で
何かが変わり始め、人々が制服を纏った
アトロポスを見る機会が次第に増えていった

本人にも明確な意識は無いままに

おわり